私は聴覚過敏だ。
夜のモーター音、真夜中に外から聞こえるピーーーという音、遠くから聞こえるサイレン、救急車、何から何まで耳が拾ってしまう。
初めて「声」を拾ったは14歳の夏。
お盆のころ、時間にして19時くらい。誰もいない道路で夕涼みをしていた。その頃好きだった人の名前を呼んだら…
道路には誰もいなかったはずなのに、
右耳に「何?」と若い男性の声がしたのだ。
思わず振り向きそうになったが恐怖で硬直した。
勇気を出して左側から振り向いたのだが、誰もいるはずがなく。
怖くなって家の中に入ったのだが、そういえばお盆だというのに車も走っていなかったし、人が歩いていてもおかしくない時間帯だったのだが。
違う空間に入ってしまったのかもしれない。
家に入って数分後、車が通ったり、人の話し声が聞こえてきたときは、なぜか安心したのだった。
あの14歳の夏から、すべてが変わった気がする。心霊現象が多発したのだ。
「音」「声」のほかに嗅覚もするどくなった。
真夜中のカスタードクリーム、まさに今作りたてというくらいの甘いバニラの香りが窓から入ってきたり、
部屋は二階だし、隣家とは2メートルくらい離れてる。
幸いにしてよくある「線香」の匂いは嗅いだことがない。
夏祭りの朝、部屋で友人と話していたら、友人と私の間を「生花」の匂いがすり抜けていった。
私が顔をしかめると、友人が気がついた。
友人もまた霊感があったのだ。
今の花の匂いって…
ごめん、うちの部屋、たまに「何か」が通るんだ。
一番嫌なのが「煙草」の匂いだ。
眠っているとき、何故か顔の側で匂いがする。
あれはもしかしたら顔を覗きこんでいるのかもしれない。
「煙草くさっ、どっか行け!」と大声を出すと、すぐ消えてくれるけね。
昨年の10月末、選挙の頃の話だ。
雨が降りしきる土曜日の午後、母の友人が訪問。
私は二階の部屋でペーパークラフトを作っていた。
母の友人Tさんと母が話している声がする。
私の部屋は玄関の真上なので、玄関の声が筒抜けなのだ。
Tさんと母の声に混ざり、他にも女性が二人来ているようだが、どこかちぐはぐさが否めない。
会話が噛み合ってないのだ。
4人いるはずなのに、まるで2人だけで会話しているような感じ。
雨が強くなって声が書き消された。
再び雨が弱まったとき、1人の女性の声が消えていることに気がついた。
あの強い雨の中、帰っていったのかな?と思った。
残されたもう1人の女性が声高に叫んでいる。
「この家には何人家族が住んでいるの!?」
え?何その質問、あんなに声高に叫んでいるのに母とTさんは普通におしゃべりしている。
あれ?これ、おかしくない?
また雨が強くなった。弱くなったとき、もう1人の女性の声が聞こえなくなっていたことに気がついた。
夕方、母に「今日来ていた人達、Tさんのお友達?」と聞いたら
嫌そうな顔で「Tさんしか来てないよ」
あぁ。やっぱり。あれは「この世の者ではなかったのか」と気がついた。
それにしてもクリアに聞こえた。
だがこれで終わりではなかった。
ある日の夕方、誰かが来訪。
母が二階に駆け込んできた。どうやらクリーニング屋さんのようだ。
階下でおじさんの声がする。
おや?いつもの配達員の息子さんじゃないのかな?
声の感じだと気のいいオッサンって感じだなと思っていた。オッサンは誰かに話しかけている感じ。
あぁ研修中のオッサンなのかもしれない。
勝手にそう思った。
母が戻り、「ありがとうございましたー」と息子さんが玄関から出ていく。
オッサン「毎度どうもー!」
夕方、母に「クリーニング屋さん、今日2人だったね」といったら、
嫌な顔をされて「いや、息子さん1人だったけど、あんた、また何かの声を聞いたの?」
( ・_ゝ・)ゞそのようです。
タイトルの「死者の呼び声」は数年前からたびたび聞いている謎の声である。
必ず真夜中24時過ぎに現れる、その現象は、必ず風の強い日に現れるのだ。
風の音に混ざり、大勢の人の声がするのだ。
こんな真夜中にたくさんの人が歩いているわけがない。それに足音もしない。
ざわざわざわざわと老若男女の声がする。
誰が何を言っているか耳をそばだてたこともあったが、聞き取れないざわめきに不安を覚えた。
これが聞こえた日から数日後に近所の方が亡くなるのだ。
最初は幼なじみのお父様だった。
1年後くらいにまた「ざわめき」が聞こえて、数日後、同級生のお父様が亡くなった。
あのざわめきはもしや「死者の呼び声」ではないか?
ある日の夜、またざわめきを聞いたら、やっぱり近所の人が亡くなった。
でも、ここ1年くらい「ざわめき」が聞こえなくなっていた。
数日前、いつもは22時に眠気が来るのに全然眠れない夜があった。
小説を読んでいたら、久しぶりにあの「ざわめき」が聞こえてきた。
まだお盆の最中だったから、百鬼夜行中なのかもなと思った。
今朝、近所の方が亡くなったことを知った。
幼少時から知っている方だったのでショックを受けた。
あの「ざわめき」はやはり死者の呼び声なのかもしれない。